ワープ

 あたたかい日。2月にこういう日ってある。

「あの季節」を思い出す日。

午前中、気持ちよくあちこち窓を開けっぱなしにして、コーヒーを飲みながら本を読んでいたら、背後でバタン!と音がした。
風でドアが勢いよく閉まった音。
瞬間、実家に居る気持ちになった。
もう存在しないあの場所に居て、ドアがバタンと閉まる音がした時の、あの様子が周囲に広がった。

現在の住居は古い集合住宅で、できるだけ大きな音は立てないように暮らしているので、バタンとドアを閉めることはない。昔は自分やきょうだいが不機嫌な時、バタンとドアを閉め、父に驚かれ、母に叱られたものだ。私にとってあのドアの音は、思春期の意思表示を象徴する音なのかもしれない。

あの頃の家と、家族の存在がよみがえった。

このドアでも、あのドアの音がしてくれるんだな、と、嬉しかった。

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