蝶のめいてい

蝶のめいてい は、永瀬清子の短編集だ。

高校生の時、渋谷西武にあった書店「ぽると・ぱろうる」で、何か「詩集」が欲しくて、タイトルと装丁がいいなと思ったこれを買ったのだ。

でも、ワクワクして詩の世界に飛び込みたかった高校生の私には、期待外れと言うか、不釣り合いのものだった。でも何となくその物体は私にとって宝物のひとつだった。

とても長い年月が過ぎ、今朝、ひらいてみた。

釣り合った。

あのときの、制服を着た自分に、買っといてくれてありがとうと、お礼を言いたいと思った。


本の帯に、あとがきの抜粋がある。ここに集めたものを、詩のけずり屑、翡翠や名木のけずり屑なんかではなく、野菜や氷のけずり屑かもしれない、と書いてある。

いつからか、制作中に「命をけずっている」と感じていることがある。仕事というのはそういうものだと思うようになったが、最初に感じたときは、驚いたものだ。

何ヶ月か前、年上の画家の口から同じ言葉が出たのを聞き、ああ、同じなんだなあ、とおもった。命をけずって生み出した大切なもの。
そして同時に、「こんなものを作ってなにになる」と言う感覚もある。けずり屑、という言葉も、わかります、と思った。


自分が大人になったんだなと思った。あの頃は、この感覚が理解出来ない高校生で良かった。しあわせに育ててもらって感謝。

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